<タックスニュース>

財務省が描く増税ストーリー  法人税引下げなら消費税は引上げ

 菅直人首相が検討を指示した「法人実効税率の引き下げ」が注目を集めている。経済産業省が要求する「法人税の5%引き下げ」で減収となる1兆5千億円程度の見合い財源を経産省は示しておらず、財務省は財源を明らかにするように求めた。
 さすがに首相指示をないがしろにできない財務省は「法人実効税率が高いのは、地方税である法人事業税と法人住民税が原因だ」(幹部)と発信。首相指示が、国税と地方税を合わせた「法人実効税率」になっていることがミソだ。
 財務省幹部は「地方の財源は、企業の業績で上下する税ではなく、安定財源であるべきだ」とも述べ、法人事業税と法人住民税を縮小・廃止して法人実効税率を引き下げて、地方への代替財源として、地方消費税の税率引き上げを示唆する。これは消費税全体の税率引き上げを前提とするもので、財務省のしたたかさが透けて見える。
 もっとも当の菅首相がぶれ始めた。「より投資的な投資に結びつくのなら、設備投資、人材育成、研究開発の減税も大きな政策課題だ」と、軌道修正を模索し始めている。法人税減税が尻すぼみになれば、経済界と経産省の口車にまんまと乗った菅首相の定見のなさがあらためて目立つだけだ。

<タックスワンポイント>

税務調査の意外な効果!?  社長が知らない不正経理も発覚

 会計検査院によると、警察本部などの不正経理が全国の7道府県警と管区学校で約1億4千万円に上ることが判明したというのだが、こうした不正経理は何も行政機関だけの問題ではない。企業の経理部門でも税務調査などをキッカケに不正の実態が明らかになることもある。
 そのため、少数ではあるものの、「税務調査に入ってほしい」という会社もあるほどだ。経営者サイドからすると、「怪しいと思っていても、社員を調べるというのはなかなかできない。こっちは経理については素人だけに、なかなか判断もつかない」(小売業者社長)という状況もあるわけだ。
 しかしこれが「2年に1度でも税務調査があれば、経理の実態がおのずと把握できる。また、経理担当者も調査があるとなれば、緊張感も保て、きちんとした処理をするはず。そう簡単に不正を行えないはず」(同)という。普通なら税務調査を嫌う経営者の方が多いが、この小売業者社長、経営管理の一部として税務調査をちゃっかり活用してしまおうというのだ。
 この社長のように、定期的な税務調査を望むのは珍しいが、当局サイドとしては、「税務調査の趣旨とは違う」と、困惑の声も聞かれる。

税理士法人早川・平会計