<タックスニュース>

大詰め迎え紛糾する税制改正  焦点は法人税、配偶者控除

 民主党の税制改正プロジェクトチーム(PT)がまとめた平成23年度税制改正への提言は、おおむね政府税制調査会の方針に沿ったものとなったが、焦点の法人税減税や配偶者控除の所得制限では、相反する方向性となった。
 これに先立って、PTは租税特別措置に関する要望を政府税調に提出していたが、政府税調はゼロ次査定で軒並み「認められない」と判定。中野寛成PT座長が厳重抗議するなど両者の関係が一時ぎくしゃくしていた。PT役員は「この提言を政府がどう受け止めるかは、まさに試金石だ」と注目する。民主党は、昨年の政権交代で党税調を廃止して、政府税調に一元化させた。
 その結果、党内で議論に参加できない不満が高まったほか、政府税調で各省庁の利害が対立して、最後は小沢一郎幹事長(当時)による党要望に決断を頼らざるを得なかった。こうした反省からPTが設立されたが、政府税調には「あくまでも政府税調で最終的には決定する」との警戒感も透けて見える。
 法人税減税と配偶者控除は選挙への影響が大きく、来春の統一地方選を控えた民主党としては譲れない一線だ。党側は「政府税調には玄葉(光一郎)政調会長と中野座長が加わっており、党の意見を担保している」との姿勢だが、どう調整を進めるかは不透明で、政権担当能力が問われてくる。

<タックスワンポイント>

過去のサービス残業代支払い  年末調整は再計算が必要

 賃金の支払われない残業、いわゆる「サービス残業」に対する労働基準監督署の監視が厳しくなっている。残業代不払い問題で気を付けなければならないのが、昨年以前に支払われる予定だった残業代を、今年になって支払うケースだ。
 基本的に、未払いとなっている残業代が過去のどの年における労働の対価で、金額がはっきり分かっている場合には、今年支払った残業代であっても、過去の給与と見なされる。つまり、過去の残業代を支給する場合には、どの時期の給与に該当するのか判断し、過去の年末調整をあらためて計算し直す必要がある。
 年末調整対象者に過去の残業代が支払われた場合の再計算の方法だが、これがなかなか面倒。新たに支払われた部分の給与所得を、すでに年末調整の済んだ給与所得に加算し、年末調整を再計算。そこで出た源泉所得税の差額分を徴収し、税務署へ納付する。過去の残業代が複数年にまたがっていれば、社員1人の年末調整を各年分それぞれ再計算する必要がでてくる。
 ここでひとつ、大きな注意点がある。年末調整の再計算に際しては、「サービス残業代が発生した当時の税法」を基準にしなければならない。つまり、平成19年分の再計算を行うのであれば、同19年当時の税法に基づき再計算をする必要があるというわけ。また、残業代を支給する社員の家族構成などについても、当時の状況に基づいて行う必要がある。対象者の中に、結婚・離婚、扶養親族の増加など、何らかの理由で家族構成の変わった人がいる場合には気を付けなければならない。

税理士法人早川・平会計