<タックスニュース>

東日本大震災  「繰り戻し還付」を実施  4月に臨時特例法案

 東北関東大震災で被害を受けた納税者を税制面で救済するため、政府は4月にも税制臨時特例法案を国会に提出する。震災で被害を受けた個人の資産や事業用資産の価値に応じて、所得税や法人税をさかのぼって減免する制度(繰り戻し還付)が柱となる。
税法には火事などで被災した場合の優遇策が定められているが、東北関東大震災が広範囲に甚大な被害が及ぼしていることを踏まえて、政府は通常よりも手厚い措置を検討している。野田佳彦財務大臣も「阪神大震災(の特例措置)を参考にしながら、適切に対応したい」と述べている。個人向けでは、震災で損失した住宅や自家用車などの家財の価値を雑損控除として課税対象の所得から控除できる。
特例法により22年分の所得から控除できるようにするため、給与所得者は源泉徴収された所得税が還付される仕組み。控除し切れなかった残りは、23年分以降に繰り越せる方向で検討している。
個人事業者に対しては、事務所や漁船、農機具などの事業用資産が損失したら、損失額を22年分の所得税に必要経費として算入できる特例を設ける方針。法人税では、震災で生じた損失を前の事業年度に計上して、損失額に対応する金額を「繰り戻し還付」できる特例も検討している。津波の被害を受けて水没した土地や建物の固定資産税は、非課税にする方向だ。
 すでに国税庁は被害が大きかった青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県で税の申告の期限を延長している。また所轄の税務署の管外に避難している納税者は、近くの税務署で還付金の支払いや納税証明書の交付を受けられる措置も実施している。

<タックスワンポイント>

申告漏れ?それとも脱税!?  刑事告発を左右する”故意性”

 不正な手段で税金を免れようとした納税者の一部については、更正処分のほかに刑事告発されることがある。いわゆる「査察制度」だ。査察制度は申告納税制度の納税秩序を維持することが目的だが、多額の申告漏れを指摘された納税者でも、告発までには至らないケースも多い。
 かたや刑事訴追を受けて法廷の場で実刑判決が下される可能性もあり、かたや単なる税務上の行政処分……。これは納税者にとって天と地ほどの大きな違いがある。刑事罰を受ける脱税犯と、課税当局の行政罰にとどまる納税者との境界線はどこにあるのだろうか。
当局の担当者は脱税について、「法的な定義はない」という。「いくら以上の所得隠しがあれば脱税」とか、「悪質」、「不正行為」といった言葉についても明確な定義付けはないというのだ。では、どのように脱税の犯罪性を認定するのか。
 「脱税の成立には『故意』であることが必要となる」としており、具体的な構成要件として、①偽りその他不正の行為の認識、②ほ脱の結果の認識―を挙げる。つまり偽った申告であること、そして偽った申告の結果が脱税につながると、納税者自身で認識していることが要件という。
 また担当者は、「適正・公平な申告納税制度に”挑戦”するような脱税は、看過できない」と声を強める。脱税の告発では、「コイツは許さない」といった当局の意気込みが決め手になることも実際あるようだ。
 ちなみに21年度中、一審判決が言い渡された件数は141件あり、その全てについて有罪判決が出されている。実刑判決は7人に下されている。

税理士法人早川・平会計