<タックスニュース>

政府、復興基本方針を策定  10年間で総額23兆円

 政府の東日本大震災復興対策本部は7月29日、10年間の復旧・復興事業費を約23兆円とし、約19兆円を当初5年の「集中復興期間」に投入するとした復興基本方針を決めた。
 政府原案にあった財源確保のための10兆円規模の臨時増税と、5〜10年としていた復興債の償還期間は、民主党の強い反発で明記を断念した。最大の焦点であった臨時増税の具体案を盛り込めなかったことで、2011年度第3次補正予算案の編成が迷走するのは必至だ。
 民主党が同日に開いた会合では、増税に関して3時間以上にわたって反対論が噴出。岡田克也幹事長ら執行部側は、「増税」の表現を「税制上の措置」と改めることなどで合意を図ったが、反対論は一向に収束せず、最終的に増税額も償還期間も削除する骨抜きの内容で決着した。
 政府・民主党は8月以降、政府税制調査会などで具体的な財源論議に入る予定だが、党側は歳出削減と、特別会計などの「埋蔵金」での財源確保を優先するよう求めており、増税論議には事実上足かせをはめられた格好だ。償還財源が明確化されないまま復興債が発行されれば、赤字国債の増発と何ら変わらず、財政規律に対する市場の疑問が強まるのは確実だ。
 政府原案への反対論は、小沢一郎元代表グループだけでなく、中間派の若手・中堅にも広がっており、今回の事態は菅直人首相の求心力低下と、増税への反発の根深さを裏付けた格好。8月後半にも行われる民主党代表選の争点にもなりそうで、復興財源論議は一段と停滞しかねない情勢だ。

<タックスワンポイント>

平成22年度「租税滞納状況」を公表  原告訴訟の国側勝訴率は100%

 国税庁は7月23日、平成22年度の租税滞納状況を発表した。新規発生滞納額は6836億円で、前年度の7478億円より9・2%のマイナスとなった。これにより12年連続の下降線をたどり、新規発生滞納額が最も多かった平成4年度の36・2%まで減少した。新規滞納額のうち最も多いのは消費税の3398億円で、前年比では微減しつつも全体の半数近くを占めた。
 整理済額は7591億円で、新規発生滞納額を755億円上回り、前年比470億円のマイナスとなった。これにより滞納残高は1兆4201億円となり、ピークであった平成10年度の2兆8149億円の半数にまで減少した。
 さらに同庁は「原告訴訟の提起及び滞納処分免脱罪による告発の状況」も公表。差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟など、国が原告となって納税者を訴える原告訴訟の同年度の提起件数は200件。前年度からの審理中事案を含めて225件が終結し、その全てが国側の勝訴であった。また財産の隠ぺいなどによって徴収を免れようとする悪質な事案に対する告発件数は同年度2件に止まった。

税理士法人早川・平会計