<タックスニュース>

GPIFのバクチが大負け  安倍首相「利益出なければ年金減額も」

 「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響してくる。その場合は給付額で調整するしか道はない」安倍首相は2月15日に開かれた衆院予算委員会で、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が損失を出した際には、国民に支払われる年金額を減らすことで調整するという考えを明らかにした。
 GPIFは2014年、それまでの国債など比較的安全性の高い投資に重心を置いていた方針から、より高い収益性が見込める株式への配分を増やす方針へと転換した。少子高齢化が進むなか、これまでどおりの運用方針では将来の給付額を確保できなくなったことに加え、GPIFが持つ130兆円の巨大資産の一部を市場に回し、株高を誘導しようという意図もあったといわれる。
 しかしリターンの高い投資には、その分高いリスクが付いて回る。方針変更してしばらくは安定して収益を出していたものの、15年7~9月期には初めて損失を出した。損失額は7・9兆円に上り、方針見直し以降積み上げた12兆円のうち6割以上を失ったことになる。
 さらに16年の年明けからの世界的な市場の動揺で、株価はますます下落傾向にある。正確な額は発表を待たねばならないが、一説には直近3カ月で資産を10兆円近く減らしたとの見方もあるという。
 冒頭の首相の答弁は、民主党の玉木雄一郎議員が発した「GPIFで想定された運用益が出ないときには、年金が減額されることは否定しないか」という質問を受けてのものだ。首相は「利益が出ないなら支払いに影響してくる」と答えた。原資がなければ予定通りの給付ができないのは当たり前だが、首相の口から改めてはっきり言われることは相応の反響を呼んだ。
 首相はその後、「利益が出るかは非常に長いスパンで見るものなので、その時々の損益が直ちに年金に反映されるわけではない」と続けた。その言葉通り、運用のマイナスはあくまで短期的な結果に過ぎない。長いスパンで見れば、利益が出ることもあるし損失が出ることもあるだろう。事実、今回の約10兆円と見込まれる損失を含めても、運用方針を改めてからGPIFの累計運用益はプラスとなっているのだ。だがそれでも、国民から預かった年金積立金の運用姿勢として正しいのかは疑問が残る。
 今のままでは近い将来に社会保障制度が立ちゆかなくなるのは避けられない事実だ。これまでの人口増、経済成長に依拠したシステムである以上、今後同じ考え方で維持することに無理があるのかもしれない。しかし、だとすれば最優先でやるべきはリスクを抱えた一か八かのギャンブルに賭けることではなく、社会保障制度そのもののあり方を根本から見直すことではないだろうか。政府が株式投資というギャンブルに負けたとき、傷を負うのは他でもない国民だ。

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<タックスワンポイント>

私立幼稚園の保育料は公立の3倍!  1人最大30万円を補助

 幼稚園の事情は地域によって違いがあるが、いまや公立の幼稚園に子どもを入園させるのは至難の業といっていい。文部科学省の統計によると、全体の8割は私立の幼稚園に通っているという。財政難を理由に、さらに公立幼稚園を廃止する方向で検討している自治体もある。大阪市は市内約60ある市立幼稚園を2020年までに全廃する方針を示している。福岡市も「民間が担うことができるものは民間に委ねる」という考えに立ち、市立幼稚園を廃園する方向だという。東京都でも大田区や世田谷区が廃止の方向で動いている。
 私立幼稚園は公立幼稚園より保育料がはるかに高額だ。幼稚園は満3歳から小学校就学までの幼児を教育する施設のことを指すが、文部科学省の「平成24年度子どもの学習費調査」によると、公立幼稚園3年間の保育料が約69万円であるのに対し、私立幼稚園は約146万円となっている。私立幼稚園は公立の約2倍の費用が必要だということだ。私立のなかには入園料だけで10万円以上かかる幼稚園もあり、公立とくらべて3倍以上にのぼることも考えられる。
 そこで利用したいのが「私立幼稚園就園奨励費補助金」という制度だ。年間最大で約30万円補助され、所得や子どもの数によって金額が変わってくる。東京・練馬区を例に見てみたい。階層区分が4で、3人とも私立幼稚園に通っていたとすると、長男が6万2200円、次男が18万5000円、3男が30万8000円で、総額55万5200円補助されることになる。
 自治体によって支給基準が違っているので、各自治体に問い合わせることをお勧めしたい。

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