<タックスニュース>

事業承継税制が拡充  猶予取り消し時の税負担に救済策

 中小企業の事業承継時に贈与税・相続税の負担を減らせる「事業承継税制」は年々拡充されており、2017年度改正でもさらなる要件緩和や利便性の向上が図られている。
 同税制を利用するためには、自社株の承継後5年間にわたって一定の雇用を維持しなければならず、途中で要件を満たせなくなった時には、それまで猶予されていた贈与税や相続税の納税義務が加算税などを加えて発生する。そのため将来的な猶予取り消しリスクを恐れて中小企業が積極的に利用に踏み切れないことが課題となっていた。
 この問題を解消するため、17年度改正では、猶予期間中に自然災害で被害を受けた事業者については、雇用確保要件を免除する。また大きな被害を受けたことで倒産せざるを得なかった企業については、猶予していた税負担そのものを免除するよう改める。
 また同制度では5年間にわたって平均8割以上の雇用を維持することが求められるが、従業員4人以下の事業者は従業員が1人減るだけで条件を満たせなくなってしまうため、これを改めて、従業員が4人以下なら1人減っても猶予を継続できるよう条件を緩和する。ただし元の従業員数が1人の時は、0人になってしまうと猶予は受けられない。
 事業承継税制で最も大きい見直しは、同税制と、相続時精算課税制度を併用できるようになることだ。これまでは自社株の贈与後、猶予期間中に要件を満たせなくなった時には、それまで贈与した自社株が暦年贈与扱いとなり加算税も発生していた。しかし相続時精算課税制度を選択できるようになったことで、もし贈与税の猶予が取り消されることになっても、2500万円までは一律20%の税率となり、加算税も付かずに済むようになる。事業承継税制を使う上でのリスクが大きく軽減されたと言えるだろう。
 一方、事前に検討されていた、小規模事業者の雇用維持要件の6割への引き下げや、計画的生前贈与へのインセンティブの導入などは盛り込まれなかった。

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<タックスワンポイント>

欠損金の繰り越し控除で債務免除益相殺  高額な法人税を納めずに済む!

 金融機関が融資先企業の経営再建などを目的に債務を免除することがあるが、会社は債務免除を受けると、免除された額が「債務免除益」となり、課税対象となる。
通常、銀行が債権1億円を放棄すれば、会社は1億円の利益があったことになり、税率を23・9%とすると2390万円の法人税が課税される。しかし、経営が厳しくて債務免除された会社が多額の税金を納めることは現実的ではなく、銀行としては債務免除が経営をさらに圧迫するようでは債権放棄した意味がない。
 そこで税務上、債務免除益などの所得があったときは、その事業年度以前の欠損金(赤字)を繰り越して債務免除益から控除できる制度があり、多額の税金を納めずに済むようになっている。要件は、(1)青色申告法人であること、(2)繰越期間は翌事業年度以後9年間、(3)翌事業年度以降から順次控除すること――となっている。
 なお、債権者である会社が取引先再建のために債権放棄をすると、その損失負担による経済的利益は寄付金にならず損金にできる。

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