<タックスニュース>

中小企業庁が「事業承継5ヶ年計画」を策定  中小企業のM&Aを5倍に

 中小企業庁は7月7日、中小企業の早期の事業承継へのインセンティブ強化やM&Aの促進などを盛り込んだ「事業承継5ヶ年計画」を策定、公表した。現状、年間400件程度となっている中小事業者のM&Aのマッチング件数を、今後数年間で5倍の年間2千件にまで増やすという。また30万社に事業承継診断を実施し、地域に根ざした承継サポートの取り組みを強化していく内容などを盛り込んだ。
 5ヶ年計画は大きく分けて、小規模M&Aマーケットの育成、早期事業承継へのインセンティブ付け、経営人材野活用、地域における事業統合支援、地域の支援体制の確立などに分かれている。
 小規模M&Aについては、国が運営する事業引継ぎ支援センターの人員、予算を強化し、昨年度には400件だったマッチング件数を今年度中に1000件にまで増やすという。さらに来年度からは個人保証や債務の処理など廃業への支援も強化し、最終的には年間2千件のマッチング成立を目指していく。
 M&A支援は現在、地域の金融機関や民間業者などが担っているが、その多くは1件当たりの成約手数料が数千万円を超えるような大企業同士のマッチングが中心となっている。今後はM&A支援に特化した会計事務所や地域の税理士の新規参入を促し、年商1?10億円規模、仲介手数料1千万円以下の中小企業M&Aに注力していく方針だ。
 また円滑な事業承継には周到な準備が必要となることから、後継者選びを含めて早期の着手を促すため、早期承継に対して複数のインセンティブを用意することを盛り込んだ。すでに今年度からは、事業承継や後継者の経営革新にかかる費用を最大500万円補助する「事業承継補助金」がスタートしているが、今後のさらなる補助金の充実や、事業承継税制のさらなる活用といったインセンティブ強化を図ることで、早期の承継と後継者の経営革新を後押しするとしている。
 人材面では、大企業の経営幹部を歴任した人材などを中小企業の後継者をサポートする経営幹部として活用するために、紹介制度などを充実させるほか、経営人材の活用を促進させるためのインセンティブも設ける。また経営スキルの高い人材を次期経営者候補や社外アドバイザーとして活用できる環境整備も進めていくという。
 さらに地域の支援体制について、現在ではバラバラに活動しがちな事業承継支援を行う機関同士をネットワークでつなげ、地域内で連携して事業者をサポートできる枠組みを設置することを目指す。
 計画では、中小企業を対象とした事業承継診断を年間5万件、5年間で25万?30万件実施し、地域に支援体制を根付かせていくことを盛り込んだ。また地域に根ざす事業者が承継の失敗によって廃業などを選んだ結果、地域の物流や供給に重大な影響を及ぼすことのないよう、事業統合をふくむM&Aや、役員承継を促進するための税制面での優遇策も実施していくとしている。


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<タックスワンポイント>

預金も遺産分割の対象に  最高裁が従来の判例を覆す

 1954年の判決以降、預貯金は「遺産分割の対象にならないもの」とされてきた。その判例を昨年、最高裁判所が62年ぶりに覆し、預貯は遺産分割の対象になると変更したのだ。
 実際には、これまでも相続人同士で合意すれば、預貯金を遺産分割の対象に含めることができた。また、家庭裁判所での遺産分割調停では、預貯金を含めた遺産全体をどのように分割するか話し合うように促されることが多かった。
 しかし、相続人の間で対立が激しくなると、預貯金を遺産分割の対象にする合意ができなくなってしまっていた。今回の最高裁の判例は、まさにそうした訴訟から引き出された。特定の相続人だけが、被相続人より生前に多額の贈与を受け取っており、預貯金を話し合いによって遺産分割しなければ、相続人たちの間で著しい不公平が生じるというものだった。
 最高裁のこの決定は、相続問題に巻き込まれたくない金融機関にとっても大歓迎のはず。従来から、亡くなった人の預貯金については、遺産分割協議書や相続人全員の合意書を提出しなければ、払い戻しに応じないことが多かったからだ。この対応に、お墨付きを与えられた形になる。

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