<タックスニュース>

固定資産税の減額適用せず  倉敷市が敗訴

 岡山県倉敷市にある複合ビルにかかる固定資産税に減額特例が適用されなかったとして、徳島市の不動産会社が倉敷市を訴えた裁判で、徳島地裁は7月12日、倉敷市に対して過徴収分約106万円のうち約74万円の支払いを命じる判決を下した。
 争点となったのは、地方税法で規定された併用住宅の減額特例だ。固定資産税法では、住宅用地は商業用地などに比べて3分の1から6分の1に税額を軽減する特例が設けられているが、居住用のスペースと、それ以外のスペースが併存する複合ビルなどについては、床面積のうち住居用の床面積が何割を占めるかで適用される減額割合が異なる。例えば地上5階建て以上で耐火構造の建物では、居住部分の割合が75%以上だと床面積のすべてが住宅用地として取り扱われ、逆に25%に満たないと特例はまったく適用されない。
 裁判で争われたビルについて、倉敷市は平成8年、建物の登記に基づいて全面積のうち住居用スペースは25%に満たないと判断し、減額特例を適用せず課税した。しかし26年になり、原告の不動産会社から「居住用部分は共用部分も含めて算定すべき」との指摘を受けて図面などから算定し直した結果、25%を上回ることを確認したという。地方税法では過払いによって徴収した税額の返還は原則5年までと定めているが、市に重大な過失があったとして業者が全額の返還を求めて市を訴えていた。
 川畑公美裁判長は「図面や実地調査をせずに、登記上の情報だけで特例の適用がないと判断し、課税に当たっての注意義務を尽くさなかった」と市の過失を認定する一方で、近年になるまで問い合せなかった業者側にも一部の責任があるとして、過払い分の3割を差し引いた約74万円の支払いを命じた。倉敷市の伊東香織市長は「主張が認められず残念だ。判決を詳細に検討する」とコメントした。
 近年、固定資産税の特例不適用などによる過徴収が全国で相次いで発覚している。その多くは地方税法で定められた返還の期限である5年を超え、20年を超えるものも少なくないが、ほとんどの納税者は原則どおり5年分の返還のみで泣き寝入りしているのが現状だ。今回、自治体による課税ミスが5年を超えて返還を請求できる過失と認定されたことで、全国の同様の事例にも影響を与える可能性がある。
 一方で過徴収を18年間看過した納税者側にも責任の一端があると認められたことから、過払い分を取り戻すためにも、早期から自治体が計算した固定資産税額が適正かどうかをチェックする重要性が増したとも言えそうだ。複合ビルの固定資産税に関する同様のミスが倉敷市だけに限られた話とも思えず、不動産オーナーは早急に対応したいところだ。


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<タックスワンポイント>

生保の特約リビングニーズは使い残せば課税  相続の非課税枠への適用に注意

 リビングニーズ特約とは、生命保険に加入する際に付帯するもので、原因に関係なく、医師から余命6カ月以内と診断された場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取ることができるというものだ。
 ただ、最近はリビングニーズ特約の税務処理でのミスが頻繁に見られるという。生前に保険金の一部を受け取っていたにもかかわらず、死後のみなし相続財産として500万円の非課税枠を適用してしまうケースがあるからだ。
 被相続人が契約者かつ被保険者で、相続人が受取人の死亡保険金は、生命保険の契約期間中に被保険者が死亡して相続が発生すると、みなし相続財産として取り扱われる。つまり、支払われる死亡保険金は、500万円に法定相続人の数を乗じて算出される金額が非課税となる。
 一方で、リビングニーズ特約によって生前に保険金を受け取った場合は、その給付された保険金はまるまる非課税扱いとされている。つまり前者は相続税で限度額まで非課税になり、後者は所得税で非課税になる。
 こうしたふたつの取り扱いを勘違いして適用してしまうケースが目立つというのだ。基本的に、同特約で生前に給付を受けた保険金は、みなし相続財産として取り扱われる500万円の非課税枠の適用を受けることができないことになっている。
 そのため、受け取った保険金のすべてを消費しきればよいが、使い切らないうちに被相続人が死亡し、生前に給付を受けた保険金が残った場合には、預貯金や現金などとして見なされ、相続税の課税対象となる。ただし、相続税の基礎控除額内にすべて収まる場合には納税の必要ない。


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