<タックスニュース>

経営者の高齢化対策  企業の事業売却に税優遇

 経産省はこのほど取りまとめた2018年度税制改正に向けた要望書に、企業のM&Aに税優遇を設ける内容を盛り込んだ。M&Aを税制面から後押しすることで、戦略的な事業買収といった「攻めの経営」を支援するとともに、後継者難に苦しむ中小企業に早期の決断を促すことが目的とみられる。
 経産省が提示した減税案は、後継者不足に悩む中小企業が他の会社や親族外経営者などに株式や事業を売却した際に、売却益にかかる所得税などを軽減するというもの。また事業と併せて不動産などを譲渡することもあり得るため、不動産移転にかかる登録免許税や不動産取得税についてもそれぞれ軽減するという。
 さらに企業が収益力の乏しい部門を切り離して主力事業に集中しやすいよう、株式と引き換えに事業を売却した際に譲渡利益や譲渡所得などにかかる法人税や所得税を軽くする。大企業、中小企業それぞれにM&Aにかかる税負担を軽減して、企業の新陳代謝を促す。
 今年7月に中小企業庁が発表した「事業承継5ヶ年計画」では、中小企業が利用できるM&A市場の育成や、地域の事業統合支援などを事業の柱に据えた。具体的には、国が運営する事業引継ぎ支援センターの体制強化や、民間の創業支援機関との連携強化を図り、年間2千件のM&A成立を目指していくとした。
 後継者難からくる休廃業は、倒産件数以上に増え続けている。東京商工リサーチの調査によると、昨年に休廃業・解散した企業は2万9583件で、調査を開始した00年以降最多となった。後継者が見つからないことによる休廃業・解散が増加の大きな理由の一つとなっていることは確かで、政府としては、これまでの後継者育成支援だけでなく、M&Aによる技術の継承を重視しはじめていることがうかがえる。

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<タックスワンポイント>

ペーパーカンパニーを作るなかれ  香港進出で法人税率16%を享受するには

 アメリカの経済紙は、香港を世界で最も「経済の自由度」が高い地域と評価する。実際に、法人税率が低く、税制も簡潔かつ明快なので、日本を含む外資系企業がこぞって進出している。外国の事業者にとって、香港はまさに「タックスヘイブン(租税回避地)」と見なされているのだ。
 香港には、事業税、住民税といった地方税や一般消費税が存在しない。また、「オフショア所得非課税」と呼ばれ、香港内源泉所得のみが課税対象となる制度もある。香港と香港外(オフショア)の両方から二重課税される可能性を防ぐためのもので、法人が香港外で得た所得は原則的にすべて非課税とされる。何より法人税率は一律で16・5%と安い。個人所得も税率は低く、最高17%の累進課税率と一律15%の選択適用が可能である。高所得者であっても税率はやはり15%。
 低い税率を見込んで、これから香港での会社設立を考える日本の中小企業も増えている。進出の際に気をつけたいのは、日本には、「タックスヘイブン対策税制」と呼ばれる制度があることだ。これが適用されると、香港で得た現地法人としての所得が日本側で合算課税されることになる。ペーパーカンパニーなどを現地で設立すれば、適用される可能性は高い。2016年には、神戸物産が、タックスヘイブン対策税制の適用で追徴課税1億6000万円の支払いを求められた。国税局が「子会社に役員が常駐していない」と判断したからだ。


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