<タックスニュース>

個人版「事業承継税制」  経産省が要望へ

 個人事業者者の事業用資産引き継ぎにかかる相続税を軽減する案を、経産省と財務省が2019年度税制改正に向けた要望書に盛り込んだ。18年度改正では中小企業の自社株引き継ぎにかかる税負担を軽減する「事業承継税制」で大幅な拡充が行われたが、全国約200万の個人事業者には恩恵のないものだったことを踏まえ、政府は「個人版事業承継税制」を整備することで中小事業者の減少傾向に歯止めをかけたい狙いだ。
 個人事業者の事業用資産は、大きく分けて土地、建物、設備に分けられる。このうち土地については既に、相続の際に評価額を8割減らせる特例が存在する。しかし建物と設備については優遇がないため、子などが親の資産を引き継ぐ際の税負担が事業継続の足かせになっているとの指摘があった。また18年度改正で大幅に拡充された事業承継税制は、自社株の引き継ぎについて全額を納税猶予するという”大盤振る舞い”が話題となったが、個人事業者は自社株を持たないため、優遇を受けることができなかった。
 経産省と財務省が求めているのは、経営者が個人で保有する工作機械などの設備、事業に使う建物について、相続税の算定基準となる評価額を軽減するというもの。実現すれば個人事業主にとっては事業承継の大きな助けとなるが、事業用と私用の区分が法人よりあいまいなことも多く、制度設計には困難を伴いそうだ。


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<タックスワンポイント>

生前贈与分も遺産分割の対象に  相続人かそれ以外かで扱いが変わる

 長男に財産を引き継がせたいが、他の兄弟から最低限の取り分である「遺留分」を請求されたら目的を果たせなくなってしまうので、生前に全財産を贈与しておくことで遺産分割そのものを行わせないようにする――。こんな方法を思いついたとしても、実現は不可能だ。民法では、配偶者や子、親、兄弟という法定相続人への生前贈与は、特定の人間が預かった利益として、遺産分割協議の際に「持ち戻し」することを定めている。つまり贈与した分もいったん相続財産に含めた上で、贈与を受けた人はすでに取り分をもらっていると判定するわけだ。
 この規定によれば、仮に生前贈与が15年前であっても30年前であっても、すべて特別な利益として持ち戻されてしまうのだが、さすがに何十年も前の贈与を持ち戻すのはやりすぎとの声があったのか、今年7月に成立した改正民法では「過去に行われた全ての贈与」が「死亡前10年以内の贈与」に改められた。今後は、相続人の1人にどれだけ偏った贈与を行ったとしても、10年経てば持ち戻しの対象にはならない。この改正法は2019年7月12日までに施行される。
 生前贈与が相続人以外、つまり第三者や法定相続人に当たらない親類に対するものだった場合は、また話が変わってくる。相続人以外への贈与についても遺産分割時の持ち戻しのルールはあるものの、対象となるのは「死亡前1年以内」の贈与のみ。法定相続分に絡まない人間への贈与は相続人の間の公平を乱すわけではないため、大幅に短い期間が設定されているようだ。ただしこちらでも、贈与した側とされる側の両方が遺留分の権利を侵害すると知って行った贈与だと認められると、持ち戻しの対象となる。その判断は微妙だが、例えば「相続人に財産をびた一文渡したくない」という理由で結託して行われた贈与は持ち戻される可能性が高いだろう。
 ちなみに制度としては、遺言などで「この贈与については持ち戻しの対象としない」という持ち戻し免除の意思表示を行うこともできる。この意思表示を相続人らが受け入れれば、生前贈与分を除いた上で遺産分割が行われるが、一人でも納得のいかない相続人が遺留分請求を申し立てると、持ち戻し免除の意思表示は反映されず、やはり生前贈与分も含めた上で遺留分の算定が行われることになる。遺産トラブルを防止するという上では、あまり意味がないかもしれない。


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