<タックスニュース>

小規模宅地特例が厳格化  狙われたウワサのトランクルーム節税

 自宅や店舗がある土地の相続税評価額を最大8割減らせる「小規模宅地の特例」の適用条件が、4月1日を境に厳格化された。事業用として使った期間が短い敷地を特例の対象外とするもので、一部の地主の間で流行していた「トランクルーム(レンタル倉庫)節税」を封じることが主な狙いと見られている。
 小規模宅地の特例とは、土地の相続税評価額を最大で2割にまで下げることができる特別措置で、対象となるのは被相続人が住んでいた土地や事業をしていた土地だ。仮に路線価に基づく評価額が5千万円の土地なら、最大で評価額を1千万円にまで下げられ、相続税率30%で単純計算すれば税額は1500万円のところ300万円で済むことになる。
 この特例について4月1日に施行された改正法では、事業を始めてから3年未満の土地は適用対象から外されることとなった。そう遠くないうちに相続が発生すると判断した人が、相続直前に何らかの事業を開始することで、その敷地を特例の対象にする節税策は封じられたことになる。
 2018年12月に決定した与党税制改正大綱では、相続直前のこうした対策について、「本来の趣旨を逸脱した適用」として問題視し、禁じ手として封じることをうかがわせていた。このかじ取りの背景には、街のあちこちで見かけるようになったトランクルームの貸し出し業が関係しているようだ。
 相続直前に特例の適用条件である「相続までに事業開始」という体裁を急ぎで整えるには、なるべく手間やコストがかからない事業の方がいい。その点で荷物を置くスペースを提供するだけのトランクルームの貸し出し業は理にかなっている。他の事業と比べて必要な設備が少ないので低コストで始められ、相続開始の直前に事業としてのカタチを整えやすいためだ。
 また、相続人が相続税の申告期限まで宅地の所有と事業を続ければ、その後に土地を売却しても特例の適用が取り消されることはない。そのため比較的容易に設備を撤去できるトランクルーム事業は、最終的に土地の売却を見据えている地主の相続対策として使われてきた。
 今後は事業に使った期間が短い土地は対象外となってしまうので、相続直前に事業を始める「にわか事業者」の土地は通常と同様の評価方法に基づき課税されることになる。ただし敷地内の「事業用減価償却資産」の金額が、宅地の相続税評価額の15%以上なら、これまでと変わらず特例を適用できる。すなわち改正によって特例の適用から外れたのは、トランクルームの貸し出しなど比較的安価な設備だけで行える事業用の土地と言える。
 小規模宅地特例の適用条件の厳格化は前年も行われている。
 住居用の敷地で特例を適用できる人は基本的に被相続人の配偶者か同居親族に限られているが、家を所有せずに貸家に住み、親と別居する親族、通称「家なき子」が相続するケースは例外的に特例の対象としている。以前は「家なき子」であれば基本的に特例を適用できたため、マイホームを持たないという状況を形式的に作り、特例の適用対象になるという節税スキームが流行した。例えば土地付き一戸建て住宅を所有している人が、家を息子に贈与して持ち家を持たない「家なき子」となり、自分の親の相続で特例の適用を受けるというものだ。そのため国はルールを改定し、被相続人の死亡日からさかのぼって3年以内に3親等内の親族もしくは関係法人が持つ家に住んでいた人は、「家なき子」であっても特例の対象から外された。
 また貸付用の宅地に関する適用条件も厳しくなった。人に貸しているアパートや駐車場も特例の対象であるため、相続の直前に一時的に不動産を購入し、”にわか大家”となって節税を図る人は少なくなかった。そこで相続開始前の3年以内に大家となった者は特例を適用できなくなった。
 今年と昨年の改正は、国が「本来の趣旨を逸脱した適用」とみなした税逃れを封じるものだが、制限が加えられた範囲は広く、納税者がこれまで特例の対象になると判断していた土地が、適用対象外となるおそれが出ている。

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<タックスワンポイント>

家族介護手当金は非課税  企業が出しても「見舞金」扱い

 地方公共団体の中には、要介護認定を受けている人を介護している家族に対して、支援手当を支給するところがある。また家族を介護するために会社を辞めた人は、厚生労働省から介護休業給付金を受け取れる。そのほかにも要介護者がいる低所得の世帯に慰労金を支給する制度など、介護負担に対する支援制度は全国にある。超高齢社会への移行に伴う認知症患者の増加によって介護離職などが社会問題となるなか、こうした手当や給付金を受け取りたいと思う人はどんどん増えていくだろう。
 例を挙げると、一部の地方自治体では、家族介護者支援手当として要介護者が6カ月以上介護保険を利用していないことなどを要件に、受給者1人当たりの負担額をベースに月額数千円~数万円の手当を継続的に支給する。ここでいう「要介護」とは、身体上または精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事などの日常生活について常時介護を要する状態をいう。家族介護者支援手当は、このような障害のある人の家族に対して行われる自治体からの支援なわけだ。
 助成金や補助金といったものは、たとえ公的な支援であっても、それ自体に所得税などがかかるのが原則だ。しかし国税庁は、自治体からの介護者支援手当は「見舞金的性格が認められる」として、原則非課税の扱いを認めている。厚労省の介護休業給付金についても同様で、給付金を受け取ってもそれが所得となることはない。
 民間企業に目を向けてみると、家族を介護する従業員に時短勤務を認めたり、業務内容を考慮したりという企業は多いが、そのものずばり「介護手当」を支給する会社は多くない。大企業で言えば、自動車大手のホンダが2016年に「育児・介護手当」を導入したことで話題になったくらいだ。しかし人口減少に伴い人手不足がますます深刻化していくなかで、家族を介護する人材をむざむざ離職させないためにも、何らかの対策を講じる必要性は中小企業でも高まっていくだろう。そのなかで、企業として従業員に介護手当を支給する可能性も十分にあり得る。
 それでは従業員への介護手当は税務上どう扱われるかというと、やはりこれも非課税になるだろう。入院したり自然災害に被災したりした従業員への見舞金は、原則として所得税が課されず、また会社側も福利厚生費として損金に算入できる。ただし、その金額が「社会通念上妥当な金額」を超えてしまうと否認されてしまうリスクがある点には気を付けたい。

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