<タックスニュース>

タックスヘイブン対策税制適用  サンリオVS国税法廷へ

 ハローキティなどのキャラクター商品などを手掛けるサンリオ(東京都品川区)は6月11日、東京国税局から受けた約11億円の追徴課税処分を不服として、処分の取り消しを求める訴えを東京地裁に起こした。国税は海外子会社を企業実態のない「ペーパーカンパニー」と認定して課税処分を決定したが、サンリオは徹底的に争う構えだ。
 サンリオが東京国税局から申告漏れを指摘されたと発表したのは2017年12月だ。香港にある子会社の所得を巡り、法人税率の低い国に税逃れ目的で中身のない子会社を設立した企業に適用される「タックスヘイブン対策税制」を適用されたことが理由だった。ハローキティなどのなどの人気キャラクターを商品化するライセンスビジネスなどを行う香港の子会社2社が、12年からの4年間でおよそ28億円を申告していなかったとされた。
 同社に適用されたのは、税率の低い国や地域に実体のない会社をつくる企業に対して、過度な節税を防ぐことを目的として導入された「タックスヘイブン対策税制」だ。通常、日本では海外子会社の所得には課税されないが、法人税率が過度に低い国や、法人税のない国に子会社を設立し、その子会社に主たる事業の実体がなく関連会社の株式保有や資産管理だけが目的と判断されたときには、親会社の所得と合算して日本の法人税率で課税されることとなる。以前は「これ以上法人税率が低ければ対象となる」というトリガー税率が設定されていたが、世界的に法人税の減税競争が激しくなるなかで17年度に税率基準が原則的に廃止され、現在は税率にかかわらず事業の実体をもって判断することとなっている。
 東京国税局はサンリオの子会社2社について、現地に子会社を設立する経済的合理性がなく実体のない税逃れのための法人だとして、親会社であるサンリオの所得と合算すべきと認定した。これに対してサンリオは、「子会社は、現地の消費者の嗜好を反映する当社キャラクターのローカライズ(現地化)業務やキャラクタービジネスを展開するという積極的な経済合理性を有」すると反論し、処分の取り消しを求めて再調査請求を行ったが、棄却されたとしている。
 同社は今月11日に訴訟の提起をホームページ上で報告し、子会社がタックスヘイブン対策税制を適用された件について改めて反論した。併せて、昨年7月に国税不服審判所に審査請求を行い、現在も審査中であるとしながら、「請求を行ってから3カ月以上経過し、法令上、取消訴訟を提起できる状況になった」として、提訴に踏み切った理由を説明している。
 タックスヘイブン対策税制を巡っては、自動車部品大手のデンソーが複数の海外子会社について計70億円の追徴課税を課され、最高裁まで争った結果、全面的な処分取り消しを勝ち取ったケースがある。判決では、シンガポールにある子会社の収入、所得、人員などの状況を総合的に考慮した結果、子会社の事業を「相当規模の実態がある」と認定した。サンリオの子会社についても同様に、実際の子会社の業務や人員状況などが課税処分の正当性を判定するポイントとなりそうだ。

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<タックスワンポイント>

風疹の予防接種費は控除できず  自治体が費用助成も…まずは抗体検査を

 昨年から全国で風疹が流行している。5月12日までに報告された今年の患者数は1486人で、国立感染研究所が風疹の流行に関する緊急情報を出すに至っている。風疹は本人自身に高熱や発疹といった症状を引き起こすだけでなく、咳などによる飛沫感染で広がり、特に妊婦が感染すると流産リスクが高まったり生まれてくる赤ちゃんに障害を生じさせたりする恐れがある。今年に入ってすでに2人の先天性風疹症候群の赤ちゃんが報告されているという。
 また、今年は風疹だけでなくはしかも流行していて、5月までで昨年の感染者数の倍以上の患者が報告されている。しかも、こうした流行は日本だけの現象ではなく、世界中で一度は減少したはずのこれらの感染症の患者が増えている現状がある。その背景には各国の保健政策の変遷のなかで十分な予防接種を幼少期に受けられなかった”空白世代”が生じていることや、ワクチンの効果への不信などから子どもにあえて予防接種を受けさせない親の増加などがあるという。
 ともあれ、自分のためだけでなく家族や周囲のためにも、これらの予防接種を受けていない人はなるべく早く接種を受けるべきだろう。子どもの頃に接種を受けたかどうか覚えていないという人は、病院で検査を受けることで自分が抗体を持っているかを確認できる。
 ただし覚えておきたいのは、風疹やはしかの抗体検査や予防接種の費用は、医療費控除の対象にはならないことだ。医療費はあくまで病気やけがの治療にかかる費用を指し、病気にかからないために受ける予防接種は該当しないというのがその理由で、これはインフルエンザなどにも当てはまる。
 とはいえ風疹の抗体検査には約5千円、予防接種にも同じくらいの費用がかかる。家族全員が受ければ少なくない出費となってしまうが、そうした時は自治体のホームページをチェックするようにしたい。現在の風疹の流行を受けて、多くの自治体では抗体検査や予防接種費用の助成を行っている。例えば東京都千代田区では、19歳以上の女性で妊娠予定、または妊娠を希望する人、そのパートナーや妊婦のパートナーおよび同居家族、予防接種の”空白世代”に当たる30~50代の男性――のいずれかの条件を満たす人に対しては、無料で抗体検査と予防接種を実施している。自治体によって細かい条件は異なるが、全額無料としているところも多いので、この機会に抗体検査や予防接種を受けることをお勧めしたい。はしかについても同様に助成を行っている自治体もあるので、併せてチェックしたいところだ。

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