<タックスニュース>

富裕層への税務調査  申告漏れ平均1436万円

 平成30年7月からの1年間で「富裕層」に対して5313件の所得税調査が実施され、1件当たり1436万円の申告漏れ所得が発覚したことが、国税庁がこのほど公表した報告書で分かった。富裕層以外への調査も含めた1件当たりの平均申告漏れ所得と比べると約400万円多い。特に海外投資や海外取引をしていた者への調査で発覚した申告漏れは高額となっている。
 国税当局は、有価証券・不動産などの資産の大口所有者や、経常的に所得が高額な個人を「富裕層」と位置づけて重点的に調査。平成30年度の所得税の実地調査(特別・一般)5万130件の1割以上が富裕層をターゲットとしたものだった。
 富裕層への調査で発覚した申告漏れ総額は763億円で過去最多。1件当たりの申告漏れ所得は1436万円、追徴税額は383万円で、全体平均の申告漏れ1045万円、追徴180万円と大きな差が出ている。
 富裕層の中でも海外投資や海外取引をした者に限れば、1件当たりの申告漏れ所得は3819万円、追徴税額は914万円にまで跳ね上がる。資産運用の国際化が進んでいることから、国税当局では富裕層の海外投資への監視を強化しているという。
 所得税調査の全体では、着眼調査を含む実地調査は7万3579件で、前年度の7万2953件から0・9%の増加となった。このうち申告漏れなどの非違が見つかったのは6万964件(前年度6万338件)で、調査を受けた人の8割以上が何らかの問題点を指摘されたことになる。
 実地調査1件当たりの申告漏れ所得819万円は前年度から1・3%の増加で、前々年度と比べると7・3%増えた。
 一方、文書送付や電話で申告是正を促す「簡易な接触」は53万7076件実施され、31万2916人が申告漏れなどの非違を是正した。1件当たりの申告漏れ所得金額は56万円と、実地調査と比べて比較的少額の申告が狙われていることが分かる。

税、申告、事業承継のお悩みは無料相談実施中の税理士法人早川・平会計までどうぞ

<タックスワンポイント>
生命保険が固有の財産ではなくなるとき  高額すぎると持ち戻しの可能性

 生命保険金は「受取人固有の財産」といわれる。税法では「みなし相続財産」として相続税の対象とはなるものの、民法では生命保険金を請求する権利は相続財産から除外され、原則として遺産分割の対象となることはない。保険金独自の非課税枠もあり、他の財産よりも優遇されることから、オーナー企業の後継者の納税資金や自社株対策の原資に最適といわれる。
 ただし場合によっては、この生命保険金が受取人固有の財産ではなくなる時もある。それはどういう場合かというと、特定の相続人が生命保険金を受け取った結果、他の相続人と比べて取得財産に著しい偏りが出てしまった時だ。
 例えば親が亡くなって3人の子が相続人として残されたケースで、相続財産が預金1500万円のみだったとする。3人で500万円ずつ分配すれば円満解決できそうだが、もし預金以外に長男のみ生命保険金2000万円が支払われていたとする。長男からすれば、生命保険金は前述のとおり受取人固有の財産なので、もともと自分のものであって相続財産には含まれず、遺産分割には関係ないと主張するだろう。
 しかし最高裁は、こうしたケースに対して長男にノーを突き付けている。原則として生命保険金は受取人固有の財産であるものの、「到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情」がある時には、保険金を遺産に持ち戻して分割すべきだと認定したのだ。この「特段の事情」とは、保険金の額や遺産の総額に対する比率だけでなく、同居の有無や被相続人の介護などに対する貢献の度合い、各相続人の生活実態などが該当するという。
 複数の判例によって、仮に金額のみを考慮して判断すると、保険金の額が遺産総額に対して45%?50%を超えた時にその全額がおおむね持ち戻しの対象になることが分かっている。先ほどの例でいえば、預金1500万円と生命保険2000万円で遺産総額は合計3500万円なので、それに占める保険金の比率は約57%となり、持ち戻しが必要ということになる。長男が受け取る遺産は生命保険金のみの2000万円、他の2人はそれぞれ預金750万円を得るのが最終的な結論となりそうだ。
 同様に遺留分についても、受取人と他の相続人に著しい差があると認められた時には、請求対象になる可能性がある。生命保険金は受取人固有の財産として様々な場面で強みを発揮するが、何事にも絶対はあり得ないということを覚えておきたい。

相続専門の税理士による、相続、生前対策、事業承継のご相談は、初回無料で実施中です

税理士法人早川・平会計