<タックスニュース>

2020年度税制改正大綱  M&A版・事業承継税制が見送り

 今回の大綱では事業譲渡にかかる税負担を猶予する「M&A版・事業承継税制」が見送られた。
 通常の事業譲渡と事業承継の区別がしにくく、優遇を適用するための要件について制度設計を詰められなかった。同制度では後継者のいない中小企業がM&A(企業売買)で事業を他業者に引き継いだ際に、自社株の譲渡や事業譲渡の際に買い手側に課される税負担を猶予する方針だったが、承継目的でない通常のM&Aとの区別が困難というハードルがあった。またファンドなど後継者のいない企業が買収後に転売した時に事業存続を判断しづらいなどの問題点を解消できなかったことが見送りの要因になっている。
 近年の税制改正で、承継に当たっての自社株引き継ぎにかかる税負担を実質免除する事業承継税制の特例、個人事業者の事業用資産の引き継ぎにかかる税を猶予する特例など創設してきた。しかし後継者を見つけられない中小企業も多く、M&Aによる事業引き継ぎにも税制面での後押しが必要との声は多い。今回は見送られることになったが、今後も検討は続けられることになりそうだ。

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<タックスワンポイント>

期ズレの損失に修正申告は必要なし  当期から控除、消費税も同じ

 個人事業主や12月決算の法人は、今月末で収支を締めて今年の利益や損失を確定させて税務申告を行うことになる。当然、今年中に出荷して売上を計上した製品については今年の利益に計上することになるが、もし来年になって製品に不備が見つかってしまい、大量に返品されてしまうというケースが起こったら、どうするべきだろうか。
 このように前期に売り上げた商品について、次期になって損失が発生した時は、すでに済ませてしまった前期の申告を修正する必要はなく、その当期の売上高から控除すればよい。その際には、相手方から返品の通知を受けた日か、または返品を受けた日の事業年度の損失として計上する。
 返品以外でも、前期に納品した製品に不良品などが見つかって次期に入って大幅な値引きを行ったケースや、大量発注してくれた顧客に割戻しをしたケースの取り扱いも同様だ。修正申告は行わず、値引きなどを取引相手に通知した日の事業年度で損失を計上することになる。
 なお返品された商品が課税仕入れの対象であれば、消費税についても調整を行わなければならない。具体的には返品などによって生まれた税額の差異を当期の消費税額に反映させて調整する。売上高同様に、売上を計上した期でなく、返品などが実際にあった期で調整するので気を付けたい。
 途中で課税事業者から免税事業者、または免税事業者から課税事業者に変わっている場合には注意が必要だ。免税事業者だった期間の仕入れについて、課税事業者になってから受けた返品や、逆に課税事業者だった頃に仕入れた製品について、免税事業者に変わってから行った割戻しなどについては、原則として消費税の調整を行うことはできないためだ。

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