タックスニュース

2018年8月24日 金曜日

Vol.0462

<タックスニュース>

先の見えない長期金利、税への影響は  役員貸付金や延滞税の金利にも

 10年物の国債などに適用される「長期金利」を巡り、8月初頭に市場が揺れ動いた。きっかけは7月末に開かれた金融政策決定会合で、日銀の黒田東彦総裁がこれまで歴史的な低水準に抑え込んでいた長期金利の上昇を「ある程度」まで容認したことだ。長期間にわたって続いてきた"異次元の金融緩和"の出口が見えたとの観測が市場を駆け巡り、10年国債の売買が活発化した結果、長期金利は一時1年半ぶりとなる0・145%まで上昇した。しかしそうした動きを抑制するように日銀が大量の「買い入れオペ」を行い、金利はその後0・10%程度まで再び下降。現在も日銀の思惑を測る市場との神経戦が続いているようだ。
 こうした長期金利の変動は、日本経済や個人の資産形成に様々な影響を及ぼし、もちろん税の世界も無関係ではない。例えば、会社が役員や従業員に金銭を貸し付けた時には、法令で定められた利息を取らなければ差額分が給与として課税されてしまう。法令で定める利息とは、会社が銀行などから借り入れて又貸しした時には融資にかかる利率が適用され、そうでなければ「認定利息」と呼ばれる数字を使う。例えば2017年中に貸し付けたものであれば1・7%だ。
 認定利息は国税庁が毎年発表するが、その下敷きとなっているのは銀行の貸出金利で、さらに基をたどれば長期金利の値動きがベースとなる。長期金利の値動きが認定利息に与える影響は顕著で、黒田総裁のもと"異次元の金融緩和"が始まる13年までに貸し付けたものにかかる利率は4・3%だったのが、翌14年からは1・9%まで一気に下がったことを見れば、その差が分かるだろう。
 他にも長期金利に影響される税の利率としては、延滞税や利子税に用いられる「特定基準割合」も存在する。こちらも金融緩和政策によって13年を境目に大きく変動し、それ以前は4%台で小幅に推移していたものが、14年以降は1%台後半まで下がっている。このように長期金利の変動は、税の世界にも大きく関わっている。
 会社からの借金や延滞税、利子税に付く利息であれば、思わず「低ければ低いほどありがたい」と考えそうになるが、特例基準割合は、何らかの理由で税務署などからお金が戻ってくる時の還付加算金の利息計算にも使われる。つまり利率が低ければ損だけでなく得も小さくなるというわけだ。


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<タックスワンポイント>

民法改正で「介護貢献」をカタチに  相続人以外でも金銭要求可

 7月に成立した改正民法では、これまでの相続のかたちを大きく変える見直しが多数盛り込まれた。そのうちの一つが、介護などで貢献した親族が金銭を要求できる権利の創設だ。法定相続人でない者であっても、生前に介護などで特段の貢献をしたと認められれば、遺産分割の際に一定の金銭を「特別寄与料」として要求できるようになる。
 これまでも、法定相続分以上に何らかの縁があった時に、貢献度を取り分に反映できる「寄与分」の制度はあった。しかし対象はあくまで相続人だけで、代襲相続などの例外を除き、配偶者、子、両親、兄弟姉妹だけということになっていた。例えば家族介護の現場では、長男の嫁が両親の世話をするというケースも多いだろうが、この貢献は遺産分割に反映されず、そもそも法定相続人でない長男の嫁は遺言などがない限り1円も受け取る権利がない。
 少子高齢化が進むなかで家族介護がさらに増加し、介護負担が大きくなっていくことから、改正民法では、こうした相続人以外の介護貢献者の権利を拡大する見直しが盛り込まれたわけだ。導入される特別寄与料は、これまであった「寄与分」の対象範囲を法定相続人以外の親族にも広げるもの。具体的に貢献度をどう評価するかは「寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」して家庭裁判所が決定するとしている。詳細は不明だが、従来の寄与分にならって言えば、介護費用や生活費補助など実際に負担した実費計算が原則となるかもしれない。
 介護をすることで減った本業の収入の証明は難しく、どこまで寄与分に反映されるかは不透明な部分もあるため、介護をした人の貢献がどこまで正当に評価されるかは分からない。もし自分が介護を受ける身で、世話をしてくれた人に感謝の気持ちがあるのなら、譲りたい財産を遺言などではっきり示しておくことが一番だろう。改正民法は2020年7月までに施行される。


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2018年8月10日 金曜日

Vol.0461

<タックスニュース>

高額療養費の自己負担増  最大25万円超に

 70歳以上の高齢者が負担する医療費の上限引き上げなどを盛り込んだ新たな高額療養費制度が、8月1日にスタートした。病院で外来診療を受けた際の自己負担が、所得の多い人ほど増えることになる。高額療養費の自己負担額は昨年8月に引き上げられたばかりで、高所得者の社会保障負担は増すばかりだ。
 昨年7月までの高額療養費制度では、本人の年収に応じて3段階に自己負担の上限を定めていて、年収が約370万円以上あれば「現役並み」として、最も高い上限額が適用されていた。70歳以上の人で、外来診療1回当たりで4万4400円が上限だった。
 しかし高齢化が進むなかで社会保障費の増大を抑制する狙いから、昨年8月に制度が見直された。昨年8月以降は、70歳以上で年収370万円以上の人について、1カ月当たりの外来診療の自己負担上限額を1万3200円引き上げた。新たな上限額は5万7600円で、従来から約3割増額されたわけだ。
 今年8月の見直しでは、これまで年収370万円以上を一律に扱っていたところを、「370万円以上~770万円未満」、「770万円以上~1160万円未満」、「年収1160万円以上」の3段階に分け、上限額を69歳以下の現役世代と同額とする。これまで「現役並み」として扱っていたところを、言葉通り「現役」と同じ扱いに改めるわけだ。これまで外来と入院で分けていたところを統合するなど、単純に比較できる数字ではないものの、年収1160万円以上の高所得者は、これまでに比べて自己負担の上限が世帯ベースで約3倍に跳ね上がることになる。
 高所得者の負担は増すばかりだが、今少子高齢化が止まらない以上は、医療費控除やセルフメディケーション税制といった税優遇の仕組みをこれまで以上に活用することが求められそうだ。


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<タックスワンポイント>

ペット保険など商品が豊富な少額短期保険  保険料控除の対象にはならず

 ペットには公的な医療保険制度がなく、また医療報酬額の基準がないため、愛犬や愛猫のケガや病気にかかる費用は高額になってしまうことが多い。ペットに関するアンケートサイト「ペット総研」が実施したアンケート調査によると、病気・ケガの際に掛かる治療費とワクチン・健康診断の際の医療費の平均合計額は、犬は年間5万4千円、猫は5万円だった。
 医療費や治療費の負担を和らげるため、ペットの病気やケガに掛かる費用を補償する「ペット保険」に加入する飼い主が増えている。ペット保険を提供している9社の保有保険契約は43万件、総保険料は132億円に上り、前年度(2016年度)からそれぞれ2割以上伸びているそうだ。
 ペット保険を扱う保険会社は「少額短期保険会社」で、生命保険会社と損害保険会社に続く"第三の保険会社"と言われる。基本的にそれぞれ他の2種の会社が扱う保険商品と同じタイプの商品は販売していない。
 少額短期保険会社の特徴は、保険金額が最大で1千万円と「少額」で、保険期間は商品が生保分野なら1年以内、損保分野なら2年以内と「短期」に設定されていることにある。
 少額短期保険は、生保会社や損保会社では引き受けが難しいユニークな保障内容が設定されている。例えば生命保険では審査に通りにくく加入は難しい糖尿病患者を対象とした保険がある。厚生労働省によると、糖尿病患者もしくは罹病が強く疑われる者は国内だけで1千万人を超えているそうだ。他にも、痴漢と疑われた時にその場で弁護士に無料相談できるオプションが付いた、弁護士費用を補償する保険もある。
 このようにニッチなニーズに応える少額短期保険には、生保と同様に傷害、疾病、死亡を対象とした商品もある。しかし生保とは異なり、支払った保険料を生命保険料控除の対象とすることはできない。また、少額短期保険会社が破綻しても、生保会社や損保会社と違い、加入者に一定の金額が戻ってくる保証はない。
 なお、少額短期保険は2006年に始まったばかりで歴史が浅く、生保や損保と比べて知名度は低いが、会社の数でみると生保が約40社、損保が約50社であるのに対し、少額短期保険は98社で最も多い。


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2018年8月 3日 金曜日

Vol.0460

<タックスニュース>

工藤会トップに脱税の有罪判決  "上納金"に初めてのメス

 傘下組織から集めた上納金を巡り約3億円を脱税したとして所得税法違反の罪に問われている特定危険指定暴力団「工藤会」(本部・北九州市)トップの野村悟被告に対する判決が7月18日に福岡地裁であり、所得税法違反で懲役3年、罰金8千万円(求刑懲役4年、罰金1億円)の実刑が言い渡された。上納金を巡りトップ個人に脱税の有罪判決が下されたのは異例のこと。弁護側は控訴する意向を示した。
 野村被告は、地元の企業や飲食店から得たみかじめ料や違法薬物の密売で得た収入を、傘下組織の幹部らを通して運営費名目で納めさせ、そのうち約500万円を親族らの口座に送っていた。2010年から14年に集められた上納金のうち、約8億9000万円を個人の収入として得たにもかかわらず税務署に申告せず、約3億1900万円を脱税した罪に問われていた。これに対し野村被告は、「口座の金は全て工藤会のものであり、個人の所得ではない」と主張していた。
 足立勉裁判長は判決で、野村被告の親族らが所有する複数の口座に、ほぼ同時刻に一定の額が定期的に入金されていたことを指摘し、「上納金が野村被告個人と工藤会のものに分けられていた」とする元幹部の供述に整合するとした。また一部の口座からの出金や親族の生活費や交際相手のマンション購入費に充てられていたことなどを踏まえ、「(上納金の一部が)実質的に野村被告の雑所得だと認めるほかない」と結論付けた。
 上納金システムは、覚醒剤などの違法収益や、歓楽街の飲食店の経営者から巻き上げたみかじめ料などがいったん配下組織に集められ、それらの金が上納される仕組みだ。その額は1カ月で数千万円に上るとも言われる。
 この上納金について、暴力団が例えば会社であれば、法人税を課せられるだろう。会社でなくても、収益事業が課税対象となる「人格のない社団等」であれば法人税を納めなければならない。しかし暴力団は、そのどちらでもないため、脱税うんぬん以前に、そもそも納税義務がない。
 さらに個人の所得として見ても、上納金を不動産購入や飲食費として私的に使えば個人所得とみなされて所得税が課税されるが、運営経費として使われる限り課税されることはない。これは町内会やPTAが課税されないのと同じだ。ここに裏社会特有の資金の流れの不透明さが重なった結果、暴力団の上納金は長年、国税にとっても簡単に手を出せない"アンタッチャブル"となってきた。
 野村被告が起訴まで持ち込まれたのは、資金管理担当だった組幹部が作成したメモを福岡県警が押収したことで、トップが上納金を私的に流用していた証拠になると判断されたからだ。暴力団トップの所得税法違反を認めた今回の裁判は、暴力団の資金の流れを解明する大きなきっかけとなるかもしれない。


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<タックスワンポイント>

終活用のリフォームで相続税対策  暮らしは快適に、評価額は7割に

 高齢社会化が進むなかで、資産を次世代に継承するだけでなく、本人が満足する人生の閉じ方を考える"終活"の考え方が定着して久しい。平均寿命の伸びに伴い、老後の人生が数十年続くことも珍しくない時代では、高齢化に伴って身体能力が衰えゆくなかで老後をどう快適に過ごすかは誰もが考えなければならないテーマだと言えるだろう。
 若い頃に買ったマイホームがバリアフリー仕様になっていることはまず考えられず、都市部では3階建て住宅も多いため、年を取れば階段を上がるだけでもひと苦労だ。たとえ今は不自由なく暮らせていても、年を取って体のどこかが不自由になった時、今と同じように住める保証はどこにもない。そうした問題を解決する方策として、自宅をより住みやすくするよう、段差をなくしたり水回りを一カ所に集約したりするといったリフォームを施すことは一つの手段だ。
 老後を見据えた、言わば"終活リフォーム"のメリットは、慣れ親しんだ自宅に長く住み続けられるだけでなく、長期間にわたって高齢者施設に入ったり、住みやすいように自宅を一から建て替えたりするよりも、コストがかからずに済むことだ。また築10年を超える持ち家にバリアフリー化を進めるリフォームを行うと、家屋にかかる固定資産税の3分の1が1年間免除されるという税優遇もある。税優遇だけでなく、バリアフリーに向けた取り組みを支援する施策は自治体レベルもあり、様々なサポートを受けることが可能だ。
 さらに終活リフォームは相続税対策にもつながる。建物にリフォームを施すと、国税庁は「リフォーム費用の7割分の価値が上昇したとみなす」という判定基準を用いている。つまり同じ500万円でも、現金のまま持っていれば10割評価されたものが、リフォーム費用として使うことで相続財産としては7割の350万円で評価される。住みよい住宅を手に入れられることに加えて、評価額の3割を削ることができるわけだ。もしその家を子に相続するのであれば、リフォームの恩恵はそのまま子も受けられることになり、他のところで無駄遣いをするよりはよほど有効な相続税対策だと言えるだろう。


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